「ずっと肩こりが治らない。デスクワークが多いので疲れてしまう…」
「マッサージした時は楽になるけどまたすぐに肩がこって来てしまう…」
そんな悩みを抱えている方はとても多いです。
実はその肩こり、姿勢と呼吸のクセが大きく関わっているかもしれません。
この記事では、肩こりが起こる仕組みから、当院で行っている改善方法まで、分かりやすく
解説します。
三 目次
1 l 肩こりとはどのような状態なのか
1-1 l 肩こりは病名ではなく「状態」を表す
1-2 l 肩こりの状態を起こしやすい上位交差性症候群
1-3 l 姿勢と呼吸の関係
1-4 l 肩こりを理解することの大切さ
1-5 l 当院で行っている肩こり改善の治療
肩こりは病名ではありません。これは皆さん知っている…
というより何となく分かっているかと思いますが、
なぜなら肩こりは原因が一つに決まらないからです。
そもそも肩こりって何なんでしょうか?
治療に関わって長年やっていると、患者さんから良く言われる言葉があります。
「先生、肩こりってなんですか?」
患者さんはとても純粋な気持ちで聞かれているのだとは分かってはいますが、思った以上にヘヴィな質問だなぁ、と毎回思います。
医学的には「肩こり」という病名は存在しません。
研究では “shoulder stiffness(肩のこわばり)” や “muscle stiffness(筋硬度)” と表現されます。
つまり肩こりは、
筋肉が緊張して硬くなっている状態
を指す言葉で、原因は人によって異なります。
肩こりを引き起こす主な要因は以下の通りです。
①筋肉の緊張
当たり前ですが、ではなぜ筋肉が緊張してしまうのか?というのを考える事が大切です。
これも人によって原因が異なります。
例えばマイケル・ボイルとグレイ・クックが提唱したJoint by Joint理論(関節別理論)では
人体の各関節は「可動性(モビリティ)」か「安定性(スタビリティ)」の主要な役割を交互に担っており、その連動性がパフォーマンス向上と障害予防に不可欠であるというアプローチがあります。
つまり身体の関節は“良く動くべき関節”と“安定すべき関節”が交互に並んでいるとされています。
例えば、股関節(動くべき)が硬くなると、腰椎(安定すべき)が代わりに動き過ぎて腰痛を起こす…というように
本来の役割が崩れると、代償動作が起こり、筋肉の緊張が増えるのです。
肩こりも同じで、
「本来動くべき場所が動かない→別の筋肉が頑張り過ぎる→緊張・痛み」
という流れが出来上がってしまいます。
つまりこの“頑張り過ぎた筋肉”を一時的に緩めても、結局本来動くべき関節に
何もアプローチをしていなければ、また徐々に負担がかかってくるという事です。
②姿勢の乱れ(猫背・前屈み姿勢)
よく猫背が問題視されますが、猫背の姿勢をイメージしてください。

猫背姿勢で起こる変化
頭部・頸部の特徴
• 頭が前に出る(フォワードヘッド)
• 頸椎は**過度な伸展(上位頚椎) + 屈曲(下位頚椎)**の二重構造になりやすい
• 後頭下筋群(首の付け根の筋肉がガチガチに)
胸郭・脊柱の特徴
• 背中が丸くなる(腰椎後弯)
• 肋骨は前方に落ち込み、下位肋骨の外旋が制限(つまり肋骨の動きが悪くなります)
• 横隔膜の可動性が低下し、吸気優位の浅い呼吸になりやすい
肩甲帯・肩甲骨の特徴
肩甲骨は
• 肩甲骨は外転(前方へ広がる)
• 上方回旋が不足
• 軽度の挙上
• 内側縁が浮きやすく、前鋸筋の機能低下が起こる
• 僧帽筋上部・肩甲挙筋が過活動し、肩がすくんだ印象になる
• 肩関節挙上時に代償動作が入りやすい
骨盤・腰椎の特徴
• 腰椎の前弯(L lordosis)が減少し、フラットバック傾向
• 腸腰筋・腹横筋の機能低下が起こりやすい(体幹の安定性が低下)
全体としての姿勢パターン
• 身体の重心がずれ、支持基底面に対して不安定になります
※支持基底面とは座っていればお尻、立っていれば両足の間のことを言います。
• 呼吸が浅く、胸郭の広がりが乏しいため、肩周囲の筋が代償的に働くことになり
結果として、肩こり・首こり・呼吸の浅さ・肩関節可動域制限が起こりやすくなります。
③呼吸パターン
近年の研究で注目されているのが 呼吸パターンです。
浅い胸式呼吸になると、
- 斜角筋
- 僧帽筋上部
など、肩をすくめる筋肉がが過剰に働き、肩こりを悪化させることがわかっています。
④ストレス(自律神経性)
※この項目はストレスなどで交感神経優位状態が続いた時に起こる身体反応が示してあります。
ざっくりと“へ~、そんなに色んな影響があるんだな”という感じで見て下さいね。
ストレスが強い人ほど肩こりを感じやすいという研究もあります。
ストレスで交感神経が優位になると、筋肉が緊張しやすくなるためです。
“Fight or Flight Response(闘争・逃走反応)”
Cannon が提唱した古典的概念。交感神経優位の総称的反応があります。
“Startle reflex(驚愕反射)”
ストレスで肩がすくむ反応の基礎にある神経反射があります。
つまり緊張状態があると、無意識的にこのような反応が起こっていて、それが肩こりを引き起こしていると考えられます。
【心理・身体ストレス】
(痛み、不安、長時間の同一姿勢、過労、睡眠不足)
↓
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① 交感神経系の活性化(Sympathetic Activation)
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・ノルアドレナリン分泌↑
・心拍数↑ / 血圧↑
・末梢血管収縮 → 皮膚血流↓
・HRV(心拍変動)↓
↓
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② 呼吸パターンの変容(Breathing Pattern Disorder)
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・横隔膜の可動性↓
・胸式呼吸・上部胸郭優位
・過換気傾向(軽度の呼吸性アルカローシス)
↓
────────────────────────────────
③ 姿勢・運動制御の変化(Postural & Motor Control Shift)
────────────────────────────────
・肩甲帯挙上(Upper Trapezius / Levator Scapulae 過活動)
・胸郭の硬さ(Rib Cage Stiffness)
・頸部前方位(Forward Head Posture)
↓
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④ 筋緊張亢進(Increased Muscle Tone)
────────────────────────────────
・僧帽筋上部・胸鎖乳突筋の持続的緊張
・肩甲骨の安定性低下(Serratus Anterior / Lower Trap 低下)
・筋血流↓ → 乳酸・代謝産物の蓄積
↓
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⑤ 痛み・コリ・可動域制限(Pain & Dysfunction)
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・肩こり(Myofascial Pain)
・緊張型頭痛(Tension-type Headache)
・頸部痛 / 胸郭可動性低下
↓
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【痛みがストレス源となり、交感神経優位をさらに強化】
= “Stress–Pain Loop(ストレス痛みループ)” の形成
⑤眼精疲労(眼球運動の低下)
パソコンやスマホなどの画面をずっと見ていると殆ど眼球が動いていません。
眼球運動が低下すると交感神経は優位になることが分かっています。
上部の項目でもありますが、交感神経が優位になることで体に力が入り肩こりに繋がります。
⑥血流低下
筋肉が硬くなると血流が悪くなり、
酸素不足 → 疲労物質がたまる → さらに硬くなる
という悪循環が起こることが研究で示されています。
など、複数の要因が絡み合って起こる為、医学的に一つに特定できません。
なので、病名としては扱われないのです。
頚や肩が前に出てしまい、背中が丸まっている姿勢のことで、デスクワークや前傾姿勢の作業が続く事で陥りやすくなります。

上位交差性症候群とは上図のように
赤い部分の、緊張して短くなっている筋肉
- 僧帽筋上部
- 肩甲挙筋
- 斜角筋
- 胸鎖乳突筋
- 大胸筋・小胸筋
青い部分の、弱化して上手く使えていない筋肉
- 僧帽筋中・下部線維
- 前鋸筋
- 頚部深層屈筋群(頚最長筋)
身体の上部でこの2つの問題が交差するように起こっている為、上位交差と呼ばれています。
背中が丸くなると、肩甲骨は外に流れて(外転・上方回旋)いくので、肩関節は内旋して内巻きになりやすいです。
呼吸の主役は「横隔膜」と「腹横筋」
この2つが胸郭とお腹の圧力を調整しながら、身体をひとつのユニットとして動かしています。
つまり、呼吸が乱れると姿勢も乱れ、姿勢が乱れると呼吸も乱れる。
この関係が肩こりに大きく影響します。
🔷 呼吸が肩甲骨の動きに影響する理由
呼吸をすると胸郭が広がったり閉じたりします。
胸郭の形が変わるということは、その上に乗っている 肩甲骨の位置や動きも変わるということ。
特に問題になりやすいのが 「吸気優位(吸う方が強い)」の呼吸パターン です。
🔷 吸気優位の人に多い臨床所見
あなたの周りにも、こんな人いませんか?
- 無意識にずっと肩をすくめている
- 胸郭が硬く、腕を上げると肩をすくめたり、腰を反らすといった代償が出る
これらはすべて、吸気優位の呼吸パターンでよく見られる特徴です。
🔷 なぜ現代人は吸気優位になりやすいのか?
理由はとてもシンプルで、現代の生活環境が吸気パターンを強化してしまうからです。
- ストレス
交感神経が優位になり、浅筋膜に無意識的に力が入ってしまうことで浅くて速い呼吸に。
肩をすくめるような吸気パターンがクセになってしまいます。
- 長時間の座り姿勢
背中が丸くなることで胸郭前方が硬くなり、下位肋骨が動かなくなります。
これによりメインの呼吸筋である横隔膜がうまく働かず、首や肩周りの筋肉を使った吸気に頼った呼吸になってしまいます。
- スマホ・ゲーム姿勢
これも長時間の座り姿勢と同様に胸椎が丸くなり、横隔膜の動きが制限される。
結果として、肩を持ち上げて呼吸するクセがつく。
- 運動不足
前鋸筋・下部僧帽筋など、肩甲骨を安定させる筋肉が弱くなる。
代わりに僧帽筋上部・肩甲挙筋が過活動に。
◆ …そして起こるのが「肩こりの悪循環」
- 横隔膜が使えない
- 肩をすくめて呼吸するクセがつく
- 僧帽筋上部・肩甲挙筋が過緊張
- 肩甲骨が挙上し、首肩まわりがガチガチ
- さらに呼吸が浅くなる
- また肩をすくめる…
このループが続くことで、慢性的な肩こりが完成してしまいます。
◆ 肩こり改善のカギは「呼吸の再教育」
肩を揉むだけでは根本改善になりません。
大切なのは 横隔膜が働く呼吸パターンを取り戻すこと。
呼吸が整うと、肩甲骨の位置が安定し、肩の筋肉の負担が自然と減っていきます。
ここまで読んで頂けると肩こりというのは単純に筋肉が硬くなっているから
起こるものではないという事が伝わったのではないかと思います。
マッサージをすると凄く硬いな…と思う患者さんでも本人には肩こりの自覚はない
という方も意外と多いのです。
もちろん普段の仕事や家事などの疲れで筋肉的な疲労が溜まっている…という時は
マッサージや温熱治療などで緊張を緩めることも必要です。
ですが、慢性的な肩こりを改善したい!と本気で考えるのであれば、また違った
アプローチをしていく必要があります。
当院では患者さんの状態を問診でしっかり把握させて頂いた上で
①ラジオ波
高周波を用いた温熱治療器で、最大深部10cmまでしっかり熱を入れることで筋膜の癒着や関節の拘縮に対してアプローチが可能です。

②超音波
1MHz (1秒間に100万回の振動)の波長が長く、減衰しにくく深部まで届くモードで大きな筋群や関節包、腱付着部に対してアプローチが可能です。
3MHz (1秒間に300万回の振動)の波長が短く、浅い組織でエネルギーが吸収されやすいモードで
肩こりなどで問題になる僧帽筋上部線維や肩甲挙筋などの浅い層の筋肉にアプローチが可能です。

③立体動態波・干渉波
モードや出力によってペインコントロール(除痛)、過剰に使い過ぎている筋肉の抑制
使えていない筋肉を促通(EMS)など流して治療が可能です。

これらの物理療法や手技療法を用いて過活動を起こしている筋肉に対してリリースを行ないます。
また呼吸や姿勢などの機能改善の為のエクササイズを、患者さんの現在のレベルに合わせて
ご提案させて頂いております。
さいごに
ここまで呼吸や姿勢に関して書かせて頂きましたが、では
Q.肩こりは治りますか?
という質問に対して
A.確実に治りますとは言えません。
というのが、当院の考え方です。これはリスク回避というよりも事実です。
なぜなら、全ての人にこれらの考え方が当てはまる訳ではないからです。
重大な仕事を抱えている、子供が受験を控えている、職場に苦手な人がいる…などの
外的要因や、この記事内では触れていない感覚器や、運動連鎖などの問題があればそちらに対してアプローチを
しなければ問題の解決には繋がらないからです。
ただ10ある辛さを減らすことで、生活の質を高める事は必要です。当院ではそのお手伝いが出来るように
治療の計画をさせて頂いております。
肩こりは日頃の負担の積み重ねです。なかなかお店でメンテナンスができなくても、休息は必要になります。
家事や仕事の合間にストレッチを行い、こまめな水分補給やストレスの発散、寝具の選び方などで肩こりは緩和されます。
自分の健康のためにセルフケアの時間をしっかり作っていきましょう。
また、井の頭整骨院では身体の状態に合わせてセルフケアをお伝えさせていただきます。
つらい肩こりでお困りの方は、いつでもお気軽にご相談くださいね。