熱中症の症状

熱が放出されず体内にこもることで症状が起こる

運動や作業をすると私たちのからだの中で熱が生まれます。ただし、人間のからだには体温調節機能が備わっているため、体温が上がり過ぎたときには、自律神経の働きによって末梢の血管が拡張し、皮膚に多くの血液が流れ込むことで熱をからだの外に放出します。同時に、体温が上がったら汗をかき、その汗が蒸発するときにからだの表面から熱を奪うことで、上がった体温を下げようと働きます。
ところが、あまりに暑い環境に長くいると、体温調節機能が乱れて体外への熱の放出ができなくなり、体内に熱がこもって体温が上昇します。また、急激に大量の汗をかくと、体内の水分と塩分が失われ、体液のバランスが崩れてしまいます。それが筋肉や血流、神経などからだのさまざまな部分に影響をおよぼすと、けいれんやめまい、失神、頭痛、吐き気といった熱中症の症状があらわれるのです。

筋肉のけいれんや立ちくらみ、頭痛などがみられたら注意

熱中症は、軽い症状から命にかかわる重症なものまで、段階的にいくつかの症状がみられます。
軽いものでは、立ちあがったときなどにクラッとする立ちくらみや、呼吸や脈が速くなる、くちびるのしびれなどがあらわれることがあります。また、大量の汗をかいて体内の水分と塩分が不足すると、足や腕、腹などの筋肉に痛みを伴うけいれんが起こることがあります。ほかにも、脱水症状によってだるさ、頭痛、めまい、吐き気などの症状が見られることも。
さらに症状が進むと、40度以上の高熱、意識障害、けいれん、異常行動などを起こすことがあり、この状態を熱射病といいます。脳内の温度が上昇することで中枢神経に異常が起こり、からだのさまざまな臓器に障害が出て、命を落とすこともある危険な状態です。

熱中症になっても、軽症のうちは体温が高くならないこともあります。ただし、最初は軽症でも、放置するとあっという間に重症化することもあるため、油断は禁物。「熱が高くないから大丈夫」と思い込まず、ほかのからだの症状をよく観察しましょう。
「おかしい」と感じることがあったらまずは体温を測ることをおすすめします。ふだんより1度以上高い場合は要注意。涼しいところで横になるなどしてからだを休め、熱が下がるまで様子をみましょう。